John Joseph Mitchell: “描くことの喜びと、出来上がった絵を見る喜びはまったく違うもので、それでも僕にとってはどちらも欠かせない。片方だけでは成り立たないんです”

Friday 18 July, 2025

アメリカ東海岸、タカホー川のほとりにある築200年の家を拠点に、John Joseph Mitchell は日々、まわりに広がる湿地や農地、川、素朴な建築物からインスピレーションを受けています。
今年のTokyo Gendaiで、Ingleby Galleryから作品を出展予定。今回のインタビューでは、制作のリズムや日本の版画から受けた影響、そして手で絵を描くことの喜びについて語ってくれました。

「モチーフとイメージ、表面と奥行き、そのあいだにある緊張感を調和へと導いていくこと—それが私にとっての最終的な目標です。春信、広重、北斎といった作家たちは、それを見事にやってのけた人たちだと思います。」

タカホー川近く、築200年のご自宅での1日はどのように過ごされていますか?

朝はたいてい早起きして、家の古い応接間を使ったスタジオで絵を描いたり、ドローイングをしたりしています。昼食後、気分が乗れば、2階にあるもうひとつのスタジオで絵を描いたり、版画を刷ったり、パネル作品に取り組んだりします。そうでなければ、外に出て描きたくなるものを探しに行きます。私が暮らしているのは、大西洋沿いにある小さな町で、周囲にも同じような小さな町が点在しています。どの町にも古い家々が並び、その合間には湿地や森、農地、川が広がっています。そうした風景は、人生を通して目で見てきた、馴染みのある景色です。そこを歩き、描くことが、私にとって大きな喜びになっています。

最近はそこで何を作っていますか?

つい最近、一点もののモノタイプ作品を集めた本を完成させました。製本をしてくれたのはブックバインダーの友人で、私が刷ったモノタイプを貼り込めるよう、特別に美しい装丁の本を作ってくれたんです。グレーのリネンと黄色いパーチメントで表紙が覆われ、同じ素材で作ったスリップケースも付いています。この制作は、私の絵画のプロセスとよく似ていて、まずはフレーム入りのパネルから始めて、そこにイメージを少しずつ重ねていくというものです。本を作ってみたいという気持ちは以前からあったので、ついに形にできてとても嬉しかったです。この本は、今年夏のPhilip Martin Galleryでの展示にも出品予定で、今後もこうした作品をもっと作っていけたらと思っています。

John Joseph Mitchellさんの作品には、日常の何気ない瞬間や細部が丁寧に描かれています。そうした小さくて親密な視点に惹かれるのはなぜですか?

私は毎日絵を描きたいんです。そして、その時々に浮かんでくるフォーマルなアイデアを毎日探求していきたいと思っています。だからこそ、いつも目の前にあって、すぐに消えてしまうような小さな瞬間に自然と目が向くんだと思います。

日本の版画からインスピレーションを受けているとお聞きしました。特に惹かれている点はどこですか?

ちょっと大きくまとめてしまうかもしれませんが、江戸時代後期の木版画に強く惹かれます。風景や場面を丁寧に描きながら、同時にフォーマルな構成としても美しく成立している。その両立がとても魅力的で、自分が好きな作家たちにも共通している点です。モチーフとイメージ、表面と奥行き、そのあいだにある緊張感を調和へと導いていくこと——それが私にとっての最終的な目標です。春信、広重、北斎といった作家たちは、それを見事にやってのけた人たちだと思います。

小さな作品をシリーズで制作されていますね。このスタイルに惹かれる理由は何でしょうか?

僕の絵は基本的に小さいので、同時にたくさんの作品に取り組む方が自分には合っているんです。最初からシリーズにしようと思っているわけではないのですが、まとめて制作することで、自然と色づかいやモチーフ、雰囲気に共通点が生まれてきます。

あなたにとってより大切なのは、制作のプロセスですか?それとも完成した作品ですか?


その二つを分けて考えるのは難しいですね。僕は絵を見ること、絵そのものが好きなので、自分が見たいと思う絵、自分の壁に飾りたい絵を描いています。でも、描くことの喜びと、出来上がった絵を見る喜びはまったく違うもので、それでも僕にとってはどちらも欠かせない。片方だけでは成り立たないんです。

<ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiで作品にお目にかかれるのを楽しみにしています!>

John Joseph Mitchell の Instagram は こちら

Photo courtesy of the artist

John Joseph Mitchell

1989年アメリカ・ニュージャージー州タカホー生まれ。現在も同地を拠点に活動する画家。身近な風景、人々の暮らし、静かなまなざしで切り取った日常の瞬間を通して、ニュージャージーの土地に根ざした物語を紡ぐ。ナビ派、日本の版画、ミルトン・エイヴリーといった芸術的影響を受けながら、見過ごされがちな日々の断片に美を見出す。ペンシルベニア・アカデミー・オブ・ファインアートにてMFAを取得。近年はロサンゼルス(米国)、エディンバラ(スコットランド)、ベルリン(ドイツ)などで作品を発表している。

SUBSCRIBE TO NEWSLETTER

  • This field is for validation purposes and should be left unchanged.