ローレンス・ウィナー

Presented by TARO NASU (C03)
形を成すまで叩かれた, 2001

言語 + カッティングシート

「形を成すまで叩かれた」というこの言葉が、赤い矢印とともに提示されるこの作品は、1960年代からコンセプチュアルアートの旗手として
現代美術の第一線で活躍し続けたアメリカ人アーティスト、ローレンス・ウィナーによるテキスト作品である。

「battered」とは、「(原型をとどめないくらい)打ちのめされた・壊れた・使い古して傷んだ」という意味であり、「until formed」が示す「形になるまで・形をなすまで」とは一見、矛盾するかのようにもみえる。壊されて打ちのめされたのちに、そこから生まれてくる形とはなんなのか、というウィナーの問いかけは、激動する昨今の世界情勢とその先にあるはずの希望のようなものへの暗示と解釈することもできるかもしれない。2021年に没するまで、社会やそのなかに生きる人間にいきいきとした興味を持ち続けたウィナーは、人間存在に対して常に肯定的な姿勢を貫いた人でもあった。本作品は、社会批判と詩情をヒューマニズムに昇華させたウィナーの個性をよくつたえている。

言葉と言葉を組み合わせることで、ウィナーはさまざまな「世界観」を支える論理と、その論理の背景となる倫理や文化との関係性を鑑賞者の眼前に色と形として顕現させ、鑑賞者に自分を取り囲む世界とあらためて向き合うことを促してきた。自らの作品を「インフォメーションinformation」と呼び、鑑賞者の視野をより遠く、より深くへと運んでいくことを目指したウィナー。彼にとってタイポグラフィはシンプルでありながら、鑑賞者に多義的な解釈と想像力の飛躍を促す、豊かな可能性を内包する表現手段であった。

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