山口藍展、ミヅマアートギャラリーにて

Wednesday 14 May, 2025

hitononu (detail), 2025, photo by Kei Miyajima ©ai yamaguchi・ninyu works, Courtesy of Mizuma Art Gallery

山口藍は、女の子の存在に自身の美意識を託し、その姿に揺れ動く感情や時間の気配を重ねながら、見る者の記憶の奥に触れるような作品世界を描き続けてきました。本展では、彼女たちの凛とした佇まいが「木」に見立てられ、まるで地に根を張るように、静かに、確かな存在として立ち現れます。

制作の背景には、一本のプラタナスの木の記憶があります。かつて近所の校庭に立っていたその木は、消火栓ボックスを飲み込んで大きく成長していました。改築に伴って伐採されることになり、消火栓が取り除かれると、その幹には四角くぽっかりと口をあけた大きな穴が残されていた──自然がかたちづくった人工物のようにも見えるその風景は、「ある」と「ない」のあわい、自然と人工の境界の曖昧さ、そして移ろいの在りようとして、山口の記憶に強く刻まれました。

本展を彩るのは、日々の暮らしのなかでふいに芽吹いた思考や感覚、小さな気づきの積み重ねから生まれた新作たちです。言葉になる前の、まだ輪郭を持たない感触を、山口はひとつひとつすくい取り、絵のなかに丁寧に重ねていきます。 作品の前に立ち、一本一本丹念に描かれた髪の流れや、沈黙をたたえた眼差し、指の先に続く景色を辿っていくとき、「あのね」と、作品がそっと語りかけてくるような、静かな対話の時間が訪れることでしょう。

shiru nami no hama (detail), 2025, Photo by Kei Miyajima ©ai yamaguchi・ninyu works

展示は現在開催中-2025年6月14日(土)で。
ミヅマアートギャラリー
東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2
営業時間:12:00-19:00
休廊:日月祝
入場:無料

詳細は、ミヅマアートギャラリーのウェブサイトにアクセス。

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