東京・日本橋馬喰町から、現代美術と都市文化のあいだに新たな接点をつくり続けるギャラリー、CON_。2022年のオープン以来、アートだけにとどまらず、音楽やファッション、ストリート、デジタルカルチャーなど、東京の現在進行形の表現を横断しながら、新たな文脈を提示してきました。
今回のTokyo Gendaiでは、山中雪乃の個展形式によるブースを展開します。既存の枠組みにとらわれず、東京でいま生まれている感覚をどのようにアートとして提示するのか。
CON_が見つめる「いま」の東京と、アーティストとの対話から立ち上がる新たな可能性について、お話を伺いました。
「CON_」は2022年のオープン以来、東京のアンダーグラウンドなユースカルチャーやストリート、デジタルの感性を現代美術の文脈と交差させ、極めて刺激的な展示を発信し続けてきました。初めてブースを訪れる観客に向けて、ギャラリーのユニークな成り立ちや、大切にされているコンセプトについて教えてください。
CON_は2022年4月、日本橋・馬喰町でオープンしたギャラリーです。名前は接頭辞の”con”——コネクション、コンテクスト、コンフリクト——に由来していて、何かと接続していく姿勢を活動の指針にしています。
場所は打ちっぱなしのコンクリート空間で、白い壁のギャラリーとは対照的です。作品を壁にかけるだけでは成立しにくい場所なので、アーティストと対話しながら、展示という行為そのものを一緒につくってきました。
僕らが関心を持っているのは、価値がどうやって生まれて、どう育っていくのかというプロセスです。作品として完成する手前の、アーティストの生活や関係性まで含めて見てみたい。ブースでもその空気ごと感じてもらえたら嬉しいです。
貴廊は、いわゆる伝統的なファインアートの文脈だけでなく、グラフィティやネットカルチャーなど、「街やストリートの熱量」を感じさせるアーティストを積極的にフックアップしています。より俯瞰的なギャラリーの視点から見て、近年のグローバルな現代アートマーケットにおいて、こうしたストリートやユースカルチャーを源流とする表現への関心や評価の成熟について、どのように感じられていますか?
僕らには「ストリート」という意識はあまりなくて、どちらかというと、ファインアートだけを扱っているつもりがない、というのが実感に近いです。CON_は都市文化をひとつのテーマにしていて、音楽やファッションといった領域と往還しながら活動してきました。作家たちも複数の文化圏を行き来しながら制作していますが、それは戦略ではなく、東京で生きていれば自然とそうなる、というだけのことです。
変わったのはむしろマーケットの側で、そうした横断性を「例外」ではなく「前提」として受け止め始めています。ファインアートの制度の内側だけで完結しない実践を、”オルタナティブ”と括って脇に置くのではなく、きちんと評価と流通の仕組みにのせていく——僕らがやりたいのはそういうことです。
馬喰町のスペースが持つオルタナティブで自由な空気感は、訪れる人々をいつもワクワクさせてくれます。今回、世界中のメガギャラリーやコレクターが集う「Tokyo Gendai」という大規模な国際アートフェアの舞台に、CON_としてのエッジや批評性を失わずにコミットしていくために、ブースの構成や見せ方でどのような挑戦をされましたか?
今回は山中雪乃の個展形式のブースです。馬喰町でやっていることをフェア用に翻訳して薄めるのではなく、一人の作家の実践を深く見せることに賭けています。
山中とも、作品を並べるというより、彼女の絵画の感覚がブース全体に立ち上がるような構成を対話しながらつくっているところです。
今回のブースにおいて、国内外のアートファンに「これが東京の『いま』のリアルなエネルギーだ」と提示する、特に注目すべき作品やアーティストについて教えてください。
山中が一貫して描いてきたのは、人物というより「変容」そのものだと僕は思っています。人間を固定した「像」として定着させるのではなく、身体の輪郭がほどけ、別の何かへと移り変わっていく、その途中の状態を画面に留めようとしている。
ストロークやたれ、かすれ、画面の空白といった絵画の物質的な要素は、そこでは単なる技法ではなく、変容が起こる場そのものです。絵具が流れ、滲み、途切れる運動と、描かれる身体が「自己」から曖昧な「他者」へと移行していく運動が、一枚の画面の中で重なり合う。完成した像ではなく、生成の途中を見せる絵画です。
セルフィーを思わせるポーズが引用されているように、僕らはいま、SNS的なイメージ環境の中で自分の輪郭をたえず編集しながら生きています。自己が固定できず、常に変容の途中にあるという感覚——彼女の絵画は、その現在を外から批評するのではなく、その感覚自体をひとつの美学として引き受けている。そこに僕は強い同時代性を感じています。
日本のアートシーンや、Tokyo Gendaiに集まる国内外の熱心な観客に対してどのような思いをお持ちですか?また、今回のフェアを通じて、ブースを訪れる観客に持ち帰ってほしいメッセージをお願いします。
東京のシーンは外から「完成されたもの」として見られがちですが、実際はいままさに動いている途中です。僕らのような若いギャラリーがここに出るのは、その途中経過を隠さずに見せるためでもあります。
ブースで見てもらうのは結果ではなく過程です。それを一番面白がってもらえるのが、フェアという場だと思っています。
ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiでの展示を楽しみにしています。
CON_
2022年4月、東京・日本橋馬喰町で開廊。ビジュアリティとコンセプトの両立を軸にコンテンポラリーアートをはじめとしたさまざまな表現文化を横断するプログラムを展開している。東京の都市文化の再考と実践のなかで、コンテンポラリーアートに限らず、音楽をはじめとする表現活動を有機的なムーブメントとして捉え直すことをビジョンとして掲げ、アーティストとの対話やリサーチから生まれたプログラムを企画することで、同時代性から生まれる新しい文脈の構築を継続的に行っている。





