光のゆくえを、絵画の先へ。——青木豊がひらく境界

Thursday 20 August, 2026

絵画は、どこまでひらかれていくのだろうか。

青木豊は、キャンバスや絵の具だけでなく、光や時間、周囲の環境までも作品の一部として取り込みながら、絵画の境界そのものを問い続けてきた。鏡のように光を反射する画面は、見る角度やその場の状況によって絶えず表情を変え、作品と鑑賞者、空間とのあいだに新たな関係性を生み出していく。

近年は、支持体や制作プロセスそのものへの探求をさらに深め、絵画を二次元へと折り畳むのではなく、再び空間へとひらく試みを続けている。その関心の先にあるのは、「絵画はどこに接することができるのか」という根源的な問いだ。

多様な光と人々が交差するTokyo Gendaiを舞台に、青木豊が見つめる絵画の現在地について話を聞いた。

Yutaka Aoki《Untitled》(2026)Acrylic, spray paint, aluminum paint on canvas mounted on panel 150.0 x 150.0 cm  Photo by Osamu Sakamoto ©Yutaka Aoki, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
Yutaka Aoki《Untitled》(2026)Acrylic, spray paint, aluminum paint on canvas mounted on panel 150.0 x 150.0 cm Photo by Osamu Sakamoto ©Yutaka Aoki, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

あなたの制作活動を、まだ作品を見たことがない人に向けて教えてください。

絵画制作を中心とした造形活動を行なっています。特に絵画と次元性との関わりについて考えていて、絵の具と同じように光をメディウムとして扱うことで画面は鏡状の様相を持ちます。こうした試みによって作品は周辺の環境と時間に応答し、変化し続ける余地を持ちます。

青木さんの作品は、キャンバスの裏側を見せたり、支持体(木枠など)そのものを空間に融け合わせたりと、「絵画の構造を解体する」ようなアプローチが印象的です。私たちが普段「絵画」と呼んでいるものの境界線を押し広げようとする、その表現の探求はどこから生まれてくるのでしょうか?

絵画はどこに接することができるのか。これが知りたいのです。

2次元へと折り畳まれ続けるものを絵画の現在地と呼ぶとして、それを開きなおしてみたい。隣接する境界との接続、もしくは分離について項目を分けて棚卸しを行っているという感覚です。

installation view from Knots and Pebbles at KOSAKU KANECHIKA, 2026
©︎Yutaka Aoki, Photo by Osamu Sakamoto
installation view from Knots and Pebbles at KOSAKU KANECHIKA, 2026 ©︎Yutaka Aoki, Photo by Osamu Sakamoto

物質としてのキャンバスや絵の具だけでなく、そこに差し込む「光」や「見る角度による変化」も作品の重要な要素だと感じます。こうした光や空間の揺らぎを作品に取り入れる際、制作において最もインスピレーションを受けるのはどんな瞬間ですか?

固定できない未分化の状態に潜んでいる運動性に反応します。エネルギーが拮抗している状態です。それは時として畏怖でもあります。

近年の展示を経て、ご自身の表現、あるいは素材(アクリル、キャンバス、支持体など)との対話の仕方に、何か新たな展開や変化は生まれていますか?

単位に変化が起こってきています。作品のサイズではなく、内容という意味においてです。

画面上では自身の所作とそこで起こった現象とがせめぎ合っている必要があります。

作品毎に層の重ね方や絵の具をつくる際の配合比率の調整などを行い、作品の内容に適切な方法を試みています。

過程を経て少しずつ結晶してきた感覚があり、アクリル樹脂由来だからこそ可能な制作方法も得ることができました。

光のメタファーとしてスプレーを使用しますが、技術的な構造を得たことにより画面上で起こる現象も大きく変化しました。画面では様々な状況がひしめきあっています。

installation view from Knots and Pebbles at KOSAKU KANECHIKA, 2026 ©︎Yutaka Aoki, Photo by Osamu Sakamoto

Tokyo Gendaiという国際的なアートフェアの会場は、多様な光や人々が交錯する空間です。ここに集まる国内外の観客や日本のアートシーンに対して、どんな期待や思いを持っていますか?

会場となるパシフィコ横浜は海を湛えるみなとみらい地区に位置します。

このエリアは美術においても重要な実践が行われてきた歴史を持ちます。

フェア会場で多様な思考に触れる、美術を読む。この体験をとおしてあらためて近隣を散策すると発見があると思います。

ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiでの展示を楽しみにしています。

光のその先へ。青木豊の絵画を会場で。

会期:
2026年9月11日 (金)〜13日 (日) *ヴェルニサージュは9月10日 (木) 

会場:
パシフィコ横浜

ブース:
KOSAKU KANECHIKA

チケット購入先:

©︎ Chikashi Suzuki

青木豊

1985年熊本県⽣まれ。2008年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻を卒業、2010年同大学院造形研究科美術専攻領域修了。現在は東京を拠点に制作しています。青木豊は、絵画の視野を広げ、世界と絵画の関係とその可能性を追究する制作活動を行っています。様々なアプローチをとりながらも、青木の制作には一貫して光への眼差しがあり、特にその立体化 - つまり光が時間軸、鑑賞者の存在、展示空間などの特定の環境の要素に補完され、有機的に立ち上がるような豊かさ - を追究しています。

主な個展に「multiprime」(hiromiyoshii、東京、2011)、「外の部屋、中の庭」(熊本市現代美術館、2012)、「Mouvements | ムーブマン」(Sprout Curation、東京、2014)、主なグループ展に「絵画の在りか」(東京オペラシティ アートギャラリー、2014)、「きっかけは「彫刻」。―近代から現代までの日本の彫刻と立体造形」(熊本市現代美術館、2019)、「日本現代美術私観:⾼橋龍太郎コレクション」(東京都現代美術館、2024)などがあります。作品は熊本市現代美術館、⾼橋龍太郎コレクションにパブリックコレクションとして収蔵されています。

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