雨、雲、月光、霧ーーMiya Andoは、自然の中に現れては消えていく儚い現象を通して、「時間」を見つめ続けています。アルミニウムやガラス、紙などの多様な素材は、光や空気、鑑賞者の存在に呼応し、作品は一瞬ごとに異なる表情を見せます。自然と素材、静けさと光が織りなすその世界は、私たちの知覚や記憶を静かに揺さぶります。本インタビューでは、彼女が「時間」をどのように見つめ、私たちの知覚を作品へと変えていくのか、その作品世界の厳選を紐解きます。
初めて作品をご覧になる方に向けて、ご自身の制作について教えてください。
私の作品は、自然界に現れる儚い現象を「時間」の表れとして捉え、私たちがそれをどのように知覚するのかを探求しています。
絵画、彫刻、インスタレーション、アーティストブックなどさまざまな表現を通して、雨、雲、月光、霧、そして季節の移ろいを題材に、人がこの世界をどのように通り過ぎ、時間を経験していくのかを見つめています。

Miya Andoさんは、ニューヨークを拠点に、アルミニウムやスチール、木、ガラス、紙など多様な素材を用いて制作されていますが、ご自身の表現の核となるものは何でしょうか。
私の制作の根底にあるのは、「時間」と「観察」です。
素材はそれぞれ、光や空気、時間の流れを受け止めるために選んでいます。それぞれの素材が異なるかたちで時間を映し出し、作品ごとに異なる時間の在り方を探ることができるのです。

雨や雲、日本の「七十二候」といった儚い自然現象が作品にたびたび登場します。そうした移ろいゆく自然と、アルミニウムのような永続性をもつ素材との間には、どのような対話が生まれているのでしょうか。
雨や雲、そして七十二候は、絶えず変化し続けることで時間を映し出しています。
一方でアルミニウムは、その変化を作品そのものの中へと引き込みます。反射する表面は、光や空気、そして鑑賞者の動きによって絶えず表情を変え続けます。そのため作品は固定された存在ではなく、環境や見る人との関係性の中で変化し続けるものになるのです。
制作のなかで、最もインスピレーションを受けるのはどのような瞬間ですか。
私の制作の基盤にあるのは「観察」です。
雨が降る瞬間、流れる雲、月明かり、霧、季節の移ろいなど、普段は見過ごされてしまうような静かな瞬間に、私は強く惹かれます。
そうした儚い現象を丁寧に見つめ続けることで、それらは時間を理解し、私たちが世界をどのように知覚しているのかを考えるための手がかりとなっていきます。
Tokyo Gendaiでは新作・近作が発表されます。日本で作品を発表することについて、また来場者にどのような体験をしてほしいとお考えですか。
日本で作品を発表できることは、私にとってとても個人的な意味を持っています。その機会をいただけることに、いつも深く感謝しています。
私は日本人の血を引いていますが、外見から日本人として見られないことも多く、自分のアイデンティティを問われる経験をしてきました。日本文化の内側で生きながらも、同時にその外側にいるように見られるという感覚は、私が長年続けてきた「観察」という実践にも大きな影響を与えています。
私は、作品には「こう見てほしい」という唯一の答えはないと思っています。
鑑賞者はそれぞれ異なる記憶や経験、そして異なるものの見方を持っています。だからこそ、一人ひとりが作品と異なる関係を築くはずです。
私自身にとって、この作品を体験することは「静けさ」に包まれることです。その先に何を感じるかは、鑑賞する方それぞれに委ねられています。

ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiでの展示を楽しみにしています。
Miya Andoの静寂を、会場で。
会期:
2026年9月11日 (金)〜13日 (日) *ヴェルニサージュは9月10日 (木)
会場:
パシフィコ横浜
チケット購入先:
MIYA ANDO
1973年、ロサンゼルス生まれ。Miya Andoの絵画、彫刻、インスタレーション作品はこれまで、Asia Society Texas(ヒューストン)、ノグチ美術館(ニューヨーク)、SCAD Museum of Art(サバンナ、ジョージア州)、ナッソー・カウンティ美術館(ニューヨーク)、American University Museum(ワシントンD.C.)など各地の美術館で個展として紹介されてきた。また2025年11月には、自ら執筆・挿画を手がけた著書『Water of the Sky: A Dictionary of 2,000 Japanese Rain Words』をMIT Pressより刊行している。
グループ展にも数多く参加しており、Crystal Bridges Museum of American Art(ベントンヴィル、アーカンソー州)、ロサンゼルス・カウンティ美術館、Haus der Kunst(ミュンヘン)、Bronx Museum、Queens Museum(いずれもニューヨーク)などにその作品が並んできた。作品はさらに、Corning Museum of Glass(ニューヨーク)、デトロイト美術館(ミシガン州)、Scottsdale Museum of Contemporary Art(アリゾナ州)、Santa Barbara Museum of Art、The Museum of Art and History(ランカスター、カリフォルニア州)をはじめ、多数の公共機関のコレクションに収蔵されている。
Pollock-Krasner Foundation Grant Awardなど複数の助成・賞を受けているほか、パブリックコミッションの実績も豊富。代表的なのが、9.11から10年を記念してロンドン・オリンピックパークに設置された、世界貿易センターの鋼材を用いた高さ30フィートの彫刻で、DARC Award(Best Light Art Installation部門)にノミネートされている。また、歴史的建築として知られるPhilip Johnson Glass Houseのための作品制作も手がけた。
学歴は、カリフォルニア大学バークレー校で東アジア研究の学士号を取得したのち、イェール大学、スタンフォード大学でも同分野を学び、さらに日本では金属工芸の師匠のもとで修業を積んでいる。現在はニューヨークを拠点に制作活動を行っている。





