「写真」は、どこまで自由になれるのか。—— UP Galleryが示すイメージのその先

Tuesday 28 July, 2026

台湾・新竹を拠点とするUP Galleryは、写真というメディウムの可能性を拡張し続けるアーティストを紹介してきました。今年のTokyo Gendaiでは、写真を立体へと変容させるMia Liu、移民や記憶、文化の継承をテーマに写真の歴史を現代的に読み替えるArthur Ouを中心に、「Beyond the Image: Memory, Material, and Migration」を展開します。

写真を彫刻として体験する作品、古典技法を現代へつなぎ直す表現、そして土地や個人の記憶から生まれるイメージ。それぞれ異なるアプローチを通して浮かび上がるのは、「写真とは何か」という根源的な問いです。

写真は、記録するためのものから、空間や身体、そして記憶そのものを体験するメディウムへ——。UP Galleryが提示する新たな視点は、私たちが当たり前だと思っていた「写真」の概念を静かに揺さぶります。

Tokyo Gendaiの会場で、その変化をぜひ体感してみてください。

UP Galleryは、写真を単なる「記録」のメディウムとしてではなく、空間や物質へと拡張する表現を長年紹介してきました。今年のTokyo GendaiではArthur OuとMia Liuを紹介されますが、ギャラリー設立時から大切にされてきた理念や、このような実験的な表現を支援するようになった背景について教えてください。

UP Galleryは設立当初から、一貫して「ウルトラ・コンテンポラリー(最前線の現代表現)」に焦点を当ててきました。地域に根ざした実践とグローバルな視点をつなぎながら、より豊かで批評的なアートの対話を生み出すことを目指しています。

私たちが紹介する作家たちは、写真やイメージをベースにした表現を軸に、国境を越えた経験を背景としながら、アイデンティティや移動、記憶、そして視覚文化の中で形成される自己のあり方を探求しています。

活動を続けるなかで実感しているのは、現代アートにおける「写真」というメディウムは、従来考えられてきた以上に多面的な存在だということです。私たちは写真を固定されたジャンルとしてではなく、アーティスト自身の実践によって絶えず更新され続ける「言語」だと考えています。そして、その多様性を紹介し、写真表現の可能性を押し広げる作家たちを支えていきたいと思っています。

Mia Liu《Blue and White Tarp》(2022)
ILFORD Smooth Gloss Photographic Paper on Aluminium Dibond
Mia Liu《Blue and White Tarp》(2022) ILFORD Smooth Gloss Photographic Paper on Aluminium Dibond

Mia LiuとArthur Ouに惹かれた理由も、まさにそこにあります。Mia Liuは、写真を立体的な彫刻作品へと展開し、「写真は平面である」という既成概念を覆します。ボリュームや素材性、複数の視点を取り込むことで、写真を単なるイメージではなく、身体性を持つオブジェクトとして体験させてくれます。

一方、Arthur Ouは写真史への深い理解を土台としながら、その技法や思想を現代的な視点で再解釈しています。アプローチは異なりますが、二人はいずれも、写真というメディウムがその起源を大切にしながらも、新しい表現へと進化し続けられることを示している作家です。

Arthur Ou《Blue Bowl Water》(2006) Archival Pigment Print on Rag Paper

今回の展示テーマ「Beyond the Image: Memory, Material, and Migration」には、現代ならではの多層的な問いが込められています。写真が立体やミクストメディアへと展開されるなかで、来場者にどのような体験をしてほしいと考えていますか。また、イメージの境界を越えていく感覚をどのように受け取ってほしいですか。

最初に目を引くのは、おそらくMia Liuの作品でしょう。彫刻的な存在感を持ち、物質として空間に立ち現れるその作品は、現代写真の新しい可能性を象徴しています。写真を立体へと変換することで、「写真とは何か」という問いを改めて投げかけているのです。しかし、この展示は単に写真を彫刻へと拡張することだけをテーマにしているわけではありません。

ブースでは、写真史のさまざまな時代や技法を、それぞれ異なる方法で継承・更新している作家たちを紹介しています。たとえば、Mona Kuhnのソラリゼーション作品は、マン・レイらによって広く用いられた歴史的技法を現代に呼び戻しています。

Cristina de Middelは、写真における「演出」や「物語性」を探求し、写真が常に現実をそのまま映すものではないことを示しています。

Arthur Ouは、ドキュメンタリー、演出写真、アーカイブリサーチのあいだを行き来しながら、移民や文化的継承、帰属意識といったテーマを扱っています。また、作品を囲む手作りの円形木製フレームは、東洋の伝統的な額装文化へのオマージュでもあり、イメージの外側にまで物語を広げています。この展示は、一つのスタイルではなく、「写真という言語がどのように変化し続けているか」を軸に構成されています。

歴史的な技法を参照しながら、それを現代的な視点で更新する作品を通して、写真とは固定されたメディウムではなく、常に再発明され続ける存在であることを感じていただけたら嬉しいです。

Mia Liu《Desolation and Rebirth》(2022)
Premium Semigloss Photographic Paper on Aluminium Dibond
Mia Liu《Desolation and Rebirth》(2022) Premium Semigloss Photographic Paper on Aluminium Dibond

Mia Liuが見つめる台北の工業風景や、Arthur Ouが扱う移民というテーマは、それぞれ固有の土地に根ざしながらも普遍性を持っています。新竹を拠点とするUP Galleryにとって、こうした作品を東京という国際的なアートフェアで紹介することには、どのような意味がありますか。

新竹は、好奇心とイノベーションによって発展してきた街です。半導体産業やAI技術の発展によって、世界有数のテクノロジー都市となりました。2009年にUP Galleryを設立して以来、私たちはその変化を間近で見てきました。一見すると、新竹はテクノロジーの街という印象が強いかもしれません。しかし近年では、文化芸術への取り組みも着実に広がっています。

新竹鉄道芸術村でのアーティスト・イン・レジデンスや、新竹イメージミュージアム、新竹市立美術館など、多くの文化施設が地域の芸術活動を支えています。私たちは、このように技術革新と芸術的実験が共存する環境こそ、新竹ならではの魅力だと考えています。

私たちは地域に根ざしながらも、設立当初から国際的な視点を持ち続けてきました。海外アートフェアへの参加だけでなく、アメリカ、フランス、インド、香港など世界各地でプロジェクトを展開しています。

Arthur Ou《Untitled Mountain》(2006)
Archival Pigment Print on Rag Paper
Arthur Ou《Untitled Mountain》(2006) Archival Pigment Print on Rag Paper

今回、Tokyo GendaiでMia LiuやArthur Ouを紹介することも、ローカルな経験から生まれた作品は、その土地を超えて多くの人の心に響くという私たちの信念を表しています。移民、産業の変化、アイデンティティ、文化的記憶といったテーマは、特定の地域から始まりながらも、最終的には誰もが共有できる普遍的な物語へとつながっていくのです。

UP Gallery Installation

Tokyo Gendaiを訪れる日本のコレクターやアートファンと、どのような対話が生まれることを期待していますか。また今後、日本のアートシーンとどのような関係を築いていきたいと考えていますか。

Tokyo Gendaiへの参加は今年で2回目です。再び日本の皆さんとお会いできることをとても楽しみにしています。台湾を拠点とする私たちにとって、日本の豊かな写真文化や写真史には以前から深い親近感を抱いてきました。日本は世界でも特に重要な写真文化の拠点であり、多くの写真家や出版物、美術館が国際的な写真表現の発展に大きな影響を与えてきました。

今年新設された「Miki」セクションは、レンズベースの表現を専門とするUP Galleryにとって理想的な場だと感じています。私たちは、写真に対する既成概念を揺さぶり、イメージのその先へと広がる写真表現を紹介したいと考えています。

そして何より、日本のコレクターやキュレーター、アートファンの皆さんと実りある対話が生まれることを願っています。日本には写真に対する深い知識と感性を持つ観客が多くいます。私たちも作品を紹介するだけでなく、「これからの写真表現はどこへ向かうのか」という問いを共有し、語り合いたいと思っています。今回の出会いが、今後、日本の美術館や作家、コレクターとのさらなる協働へとつながっていくことを願っています。

ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiでの展示を楽しみにしています。

UP Galleryが問いかける、「写真」のその先を、会場で。

会期:
2026年9月11日 (金)〜13日 (日) *ヴェルニサージュは9月10日 (木) 

会場:
パシフィコ横浜

ブース:
UP Gallery

チケット購入先: 

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