作品の先にある未来へ Chi-Wen Galleryがつなぐアーティスト、コレクター、そして台湾

Tuesday 25 August, 2026

スクリーンに映し出される世界は、私たちの日常をどのように変えているのか。そして、アートはその変化にどう応答できるのか。2004年の設立以来、ビデオアートを軸に台湾の現代美術を紹介してきたChi-Wen Galleryは、いま改めて「ギャラリーとは何か」を問い直しています。

AIや新たなテクノロジーが急速に進化する時代に、固定された空間を越え、アーティスト、コレクター、他のギャラリーとの協働へと活動を広げるChi-Wen Gallery。Tokyo Gendaiでは、3つのギャラリーによる共同展示を通して、遊びやファンタジー、パフォーマンスから、現代社会に潜む欲望やシステムを映し出します。台湾のビデオアートが切り拓く、まだ見ぬ風景を会場で体験してください。

Chi-Wen Gallery Photo
Chi-Wen Gallery Photo

Chi-Wen Galleryのこれまでの歩みと、設立以来ギャラリーを導いてきたビジョンについて教えてください。

20年を迎えた現在も、私たちは一貫してビデオアートに焦点を当てています。一方で、近年の汎用人工知能(AGI)の急速な進化を目の当たりにし、いま改めてギャラリーの役割そのものを捉え直す時期に来ていると感じています。

ギャラリーを固定された空間としてではなく、現在という時代のニーズに応える、柔軟で生きた組織――いわば新たな「オペレーティングシステム」として捉え直そうとしています。従来のホワイトキューブ型の空間にとどまるのではなく、2025年から取り組んできたモバイル型のアプローチを模索しています。

この変化の中心にあるのが、「Emergence(湧現)」という考え方です。それは、内側から湧き上がる創造的な力を意味し、アーティストやコラボレーターとの活動を支え、方向づける原動力となっています。

この方向性は、2020年のパンデミックの際に立ち上げたChi-Wen Productionsでの活動にもつながっています。当時、私たちは新進アーティストによるライブ・パフォーマンスの発表と、30分に及ぶ映像作品の制作を支援しました。その作品はその後、TateとM+のコレクションに収蔵されています。

それ以来、私たちは台湾および海外のアーティストを継続的に支援してきました。その中には、現在ギャラリーとして正式に所属しているわけではないアーティストも含まれています。

また、他のギャラリーやその所属アーティストとのコラボレーションを通じて、ビデオアートのコレクション形成にも取り組んでいます。例えば、中堅世代のアーティストであるSu Hui-Yu、Chang Li-Ren、Tsui Kuang-Yu、Yu Cheng-Taの作品を収蔵しています。

こうしたコラボレーションへの姿勢も、今回、他の2つのギャラリーとともにTokyo Gendaiに参加する機会を喜んでお引き受けした理由のひとつです。

Chi-Wen X MOV Collection Screening Project_Jawshing Arthur Liou: Human Cannabis III-Tracing Green_Installation View at C-LAB Taipei 2025
Chi-Wen X MOV Collection Screening Project_Jawshing Arthur Liou: Human Cannabis III-Tracing Green_Installation View at C-LAB Taipei 2025

Chi-Wen Galleryは長年にわたり、ビデオアートやニューメディアを積極的に紹介してきました。これまでの活動を通して、こうした表現に対するコレクターの関心はどのように変化してきたと感じていますか?

現在のコレクターは、ビデオアートやニューメディアに対して、より積極的な役割を担うようになっていると感じます。作品を購入するだけでなく、その制作や流通を支えたり、美術館などの文化機関への収蔵につなげたりすることもできるからです。

私は、コレクター、ギャラリスト、アーティストは、アートの世界を支える密接な三角形のような関係にあると考えています。Tokyo GendaiのTaneでは、この三者が直接対話できる場をつくりたいと思っています。

さらに、ギャラリーと所属アーティストを支えるため、ビデオアートのコレクターによって設立されたMOV Collectionとも協働し、美術館などの文化機関による収蔵を目的としたプロジェクトにも取り組んでいます。

このような仕組みでは、コレクターは単に作品を購入するだけではありません。作品の制作や発表、そして長期的に社会の中で作品が生き続けていくための環境そのものを支える存在となります。

その意味で、ギャラリーはコレクションするという行為を、より積極的な参加と作品を未来へつないでいくための役割へと広げていくのです。

Tokyo Gendaiでブースを体験した後、来場者にどのようなものを持ち帰ってほしいですか?

Tokyo GendaiのTaneでは、Double Square Gallery、Project Fulfill Art Spaceと共同で、3組のアーティストによるビデオ・インスタレーションを発表します。そこでは、Yu Cheng-Taの別人格であるFAMEME、Tsui Kuang-Yu、Zhang Xu Zhanの3名の作品を紹介します。それぞれの作品は大きく異なる視覚言語を持ちながらも、遊び、パフォーマンス、ファンタジーを通して、私たちの欲望や行動を形づくっているさまざまなシステムを浮かび上がらせています。

FAMEMEの《Fancy Fantasy!》(2024)は、東京・歌舞伎町のナイトライフ、クィアな欲望、ポップカルチャーを取り込み、アートと商業的なエンターテインメントの境界が曖昧になるような没入型の世界をつくり出します。

FAMEME《Fancy Fantasy!》(2024)Music Video 4’31” 
Courtesy of the artist and Chi-Wen X MOV Collection
FAMEME《Fancy Fantasy!》(2024)Music Video 4’31” Courtesy of the artist and Chi-Wen X MOV Collection

《Exercise Living: A Seer》(2018)では、Tsui Kuang-Yuが日常的な都市空間の中で、さりげなくも不条理な行為を繰り広げます。それによって、現代の生活を形づくっている社会的な「台本」や消費主義的な習慣、そしてメディアによって生み出される「予言」のようなものを浮かび上がらせます。

Tsui Kuang-Yu 《Exercise Living: A Seer》(2018)
Action Video 9’43” Courtesy of the artist and Double Square Gallery
Tsui Kuang-Yu 《Exercise Living: A Seer》(2018) Action Video 9’43” Courtesy of the artist and Double Square Gallery

Zhang Xu Zhanの《Animal Story AT5》は、台湾の葬儀用紙細工と、旅をする民話を組み合わせたシュールなストップモーション作品です。そこでは、生と死、儀式、そして文化の変容がひとつの物語の中に共存しています。

Zhang Xu Zhan《Animal Story AT5》(2020) Single-channel animated video installation, color, sound, 7’00” (loop) Courtesy of the artist and Project Fulfill Art Space

これら3つの作品は、夢のようでありながら、どこか不穏な空間をつくり出します。そして、私たちが生きる世界の中で、アイデンティティや欲望、信念、さらには想像力までもが、どのように演じられ、メディアを通して形づくられ、絶えず変化しているのかを考えるきっかけを与えてくれます。

ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiでの展示を楽しみにしています。

作品を見ることから、その未来を支えることへ。Chi-Wen Galleryの世界を、会場でご覧ください。

会期:
2026年9月11日 (金)〜13日 (日) *ヴェルニサージュは9月10日 (木) 

会場:
パシフィコ横浜

ブース:
Chi-Wen Gallery

チケット購入先:

Chi-Wen Gallery

2004年に台北で設立されたChi-Wen Galleryは、映像とビデオを専門とし、台湾の現代美術を積極的に紹介してきたギャラリーです。

ビデオアートやニューメディア作品の制作・発表・流通を支援するとともに、新たなテクノロジーがもたらす批評的な問いを探求しています。

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