目に見えるもの、その先へ Jim Verburgが探る光、空間、そして見ること

Monday 31 August, 2026

静謐で繊細な線、幾重にも重なるレイヤー、そして光と影によってゆっくりと姿を現すかたち。Jim Verburgは、絵画や版画、インスタレーションなど多様な表現を通して、見るという行為そのものに静かな時間をもたらしている。

ひとつの作品の中に、明快さと未知、幾何学性と曖昧さを共存させ、見る人の視点や向き合い方によって異なる表情を引き出す。その繊細な線や微細な変化は、写真や画面だけでは捉えきれず、実際に作品の前に立ち、時間をかけて向き合うことで初めて感じられるものがある。

多彩なアートが交差するTokyo Gendaiで、Jim Verburgの作品とともに、日常から少し離れ、見ること、感じることに静かに向き合う時間を、ぜひその場で体験してほしい。

Jim Verburg, Untitled (the day takes form - one day, then the next #3t, #2t and #1t), 2026, 4 layers, acrylic on tarlatan, 92 cm x 37 cm each unframed

初めてあなたの作品に触れる方に向けて、ご自身の制作活動について教えてください。

私は自分の作品を、静かで、繊細なニュアンスを持つもの、そして、以前ある方に表現していただいた言葉を借りれば、「一見するとミニマルでありながら、実はそうではないもの」と説明することが多いです。

作品は通常、複数の層によって構成されています。また、伝統的な意味での「絵画」ではありませんが、版画制作で用いられる道具を使って描いています。

あなたの作品には、木炭やグラファイト、絵具といったシンプルな素材を用いながら、「残光」や「移ろう影」のような、目には見えない繊細な光のニュアンスを立ち上げる、静謐な美しさがあります。こうした捉えがたい光の繊細な表情を画面にとどめる際、制作において特に大切にされているプロセスや、層を重ねる技法について教えてください。

そう言っていただけて嬉しいです。私は、ある程度の明快さと、ある程度の「未知」が共存するような構成をつくろうとしています。

一度見ただけではひとつのものが見えても、異なる角度から見ると、また別のものが見えてくる。そうしたあり方を、私はひとつの比喩としてとても気に入っています。視点や向き合い方によって、物事の見え方は変わり得るということです。

また、あらゆるものが微妙なニュアンスを帯びていて、「こちら」か「あちら」か、そのどちらかに完全に属するのではなく、その中間のどこかにあるということにも興味があります。

作品が制作のなかでどのように展開していくのかを説明するのは難しいですね。特定の素材や方法に縛られることはありません。私はよく、私よりも版画の道具に詳しい人と一緒に制作しています。そうして一緒に、繊細な幾何学性と、曖昧さや「何もない」空間が共存するような表現を生み出すために、さまざまな素材や方法の組み合わせを探っていきます。

Jim Verburg, Untitled Triptych (when it settles #3, #4, and #5, from the series A Certain Silence), 2018, 2 layers, oil based paint, graphite and charcoal on tarlatan, 150 cm x 89 cm each.
Jim Verburg, Untitled Triptych (when it settles #3, #4, and #5, from the series A Certain Silence), 2018, 2 layers, oil based paint, graphite and charcoal on tarlatan, 150 cm x 89 cm each.

線やグリッドによる幾何学的な構成でありながら、あなたの作品からは、深い人間的な親密さや感情的な響きが感じられます。体系的な構造と豊かな感情が交差するなかで、創作において最も強くインスピレーションを受けるのは、どのような瞬間や経験でしょうか。

そのことに気づいてくださって、ありがとうございます。

私が特に気に入っている作品のなかには、時間をかけて向き合うことで、少しずつその姿を現してくるような、ささやかな体験から生まれたものがあります。見る人の目が捉えるのに十分な手がかりを与えながら、その一方で、未知のものへと迷い込めるような余白も残している。そうしたあり方に惹かれています。

作品の前に座り、じっくりと向き合うこと。そして、作品がある種の瞑想を支えるような存在になることに、私は興味があります。

こうした作品は、写真に収めるのがいつも難しいんです。人間の目には繊細に見える線を、カメラはどうしても強く捉えようとしてしまう。だからこそ私は、実際にその場で見ることによって最もよく伝わる作品をつくることが好きです。

あらゆるものがますますオンラインやスマートフォンの中に移行している今、そこから少し離れた場所や時間を持つことは、とても大切だと思います。そうした環境とは別のところで、実際に体験できる瞬間をつくることに意味を感じています。

もう10年ほど前になりますが、ヒューストンのロスコ・チャペルを訪れたことがあります。それは私にとって、とても深く心を動かされる体験でした。そして、自分の作品がどのようなものであってほしいのかを考えるうえで、確実に大きなインスピレーションとなりました。

アーティストが作品をつくるとき、そのときに感じている何かが、何らかの形で作品を通して伝わってほしいと思っています。もちろん、アートにおいてそれがいつでも可能なのかは分かりません。でも、それが私の願いです。

最近制作した作品は、今回のブースでも展示されるBill Jacobsonの《Song of Myself #1001》への応答として制作したものです。2000年代初頭から彼の本を一冊ずっと自分の本棚に置いていて、今回のフェアの準備を通して彼と出会えたことも、とても嬉しい経験でした。長年にわたって作品を知り、愛してきたアーティストに対して、自分の作品で応答するという経験も、とても楽しいものでした。

Jim Verburg, Untitled (the day takes form - one day, then the next #1t), 2026, 4 layers, acrylic on tarlatan, 92 cm x 37 cm unframed

あなたの制作活動は、ギャラリーでの個展(トロントのZalucky Galleryでの展覧会など)から、ブックデザイン、サイトスペシフィックなインスタレーションまで、幅広い媒体にまたがっています。建築や自然光を含め、作品が置かれる物理的な空間との対話を通して、最近はどのような新しい表現や実験に取り組まれていますか。

何年か前、短いダンス作品の振付を依頼されたことがあります。ダンスの経験はまったくなかったので、動きに対する自分の関心をどう表現できるのかを考える、素敵な挑戦になりました。

最近、その作品の続編のようなものをつくることを試みています。制作していたリハーサルスペースに差し込む一筋の光に反応するような作品です。これがどのようなものになっていくのかは、これから見ていきたいと思っています。

私は、アートと光、そして瞑想のための空間をもっとつくってみたいと考えています。ひとつひとつの作品と空間そのものが、全体を構成する繊細な一部となるような、チャペルのような環境です。

トロントのZalucky Galleryで最近開催した展覧会「The Day Takes Form」も、そうした考えに近いものでした。

いつか、どこかの土地に、ごくミニマルな構造物をつくってみたいと思っています。光と空間、そしてアートがひとつになるような場所です。

日本には、ぜひ訪れてみたい空間がいくつかあります。今からとても楽しみにしています。

Tokyo Gendaiは、多様なアート、人々、そして光が交差する国際的なアートフェアです。このようなダイナミックな環境のなかで、初めてあなたの作品に出会う日本の観客に、どのような体験を届けたいですか。また、どのようなメッセージを伝えたいでしょうか。

私の作品がすべての人に向いているわけではないことは分かっています。でも、興味を持ってくださる方には、ほんの少し立ち止まる時間や、何かを静かに思い巡らせる瞬間を提供できたらと思っています。

アートフェアは、ときにあまりにも多くの情報や刺激に満ちています。だからこそ、私の作品が、そこに別の種類の時間や瞬間をもたらすことができれば嬉しいです。

ありがとうございました。9月のTokyo Gendaiでの展示を楽しみにしています。

Jim Verburgの作品が生み出す静かな時間を、ぜひTokyo Gendaiの会場で。

会期:
2026年9月11日 (金)〜13日 (日) *ヴェルニサージュは9月10日 (木) 

会場:
パシフィコ横浜

ブース:
Curatorial Gallery

チケット購入先:

Jim Verburg

Jim Verburgは、トロントを拠点に活動するオランダ系カナダ人アーティスト。2022年には、モントリオールのGalerie Nicolas RobertとトロントのZalucky Contemporaryにて、2会場にまたがる展覧会「Within and Without」を開催。その他、Toronto Dance Theatreのための「Shape and Light #1」(2016)、オタワ市のパブリックアート・コミッション「The shape this takes to get to that」(2019)、Mois de la Photo Montréalで発表した「One and Two」(Galerie B-312、2011)など、幅広いプロジェクトを手がけている。

これまでにThe Power Plant(トロント)、Luciana Caravello(リオデジャネイロ)、Access Gallery(バンクーバー)、Inman Gallery(ヒューストン)、Paul Kuhn Gallery(カルガリー)、Cydonia Gallery(ダラス)など、国際的なギャラリーや美術機関でグループ展に参加。アートフェアではArt Brussels(2024、2025)、Expo Chicago(2018)、Untitled Miami(2016、2018)などに出展し、VOLTA NY(2015)やTexas Contemporary Art Fair(2015)では個展形式のプロジェクトを発表している。

映像作品「For a Relationship」はInside Out(2008)でBest Canadian Short Filmを受賞し、英国のIris Prizeにもノミネートされた。出版物として「O/ Divided/Defined」(2014年Gala des Arts Visuels Best Printed Publication最終候補)や「A New Relationship Between Reflective Sides」(2015年、MoMA PS1にて発表)などがある。作品はカナダ、米国、ヨーロッパの個人・企業コレクションに収蔵されており、近年ではブリュッセルのPanoptès Collectionのためのコミッション(2025)も手がけている。

2027年には、ロンドンのCuratorial Galleryにて個展を予定している。

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